1999年 白水社
カール・ケレーニイ(1897-1973年)
ハンガリー出身の古典神話学者。
ブダペスト大学で古典文献学を修めた後、ベルリンに留学。祖国の政治体制と妥協できず1943年にスイスに移住、ここで死去。欧州各大学に客員教授として招かれたほかはフリーの立場で、ユング、トーマス・マン、ホイジンガなどとの学問的交流を通じて実存的生の立場からの神話学を展開した。著作はごく初期の一部を除きドイツ語でなされ,邦訳には主著《ギリシアの神話》その他がある。
ギリシア神話に登場する豊穣とブドウ酒の神である「ディオニューソス」。
ニーチェは、ディオニューソスを陶酔的・激情的芸術を象徴する神として、アポローンと対照的な存在と捉えました。(『音楽の精髄からの悲劇の誕生』もしくは『悲劇の誕生』より)。このディオニューソスとアポローンの対比は思想や文学の領域で今日でも比較的広く知られており、「ディオニューソス的」「アポローン的」という形容・対概念は、ニーチェが当時対象としたドイツ文化やギリシア文化を超えた様々な対象について用いられています。
謎多き神の本質を破壊されざる無限の生と捉える本書は、象徴の森を探索しながら核心に迫り、ギリシア本土への到来や密儀集団の活動、その後の変遷について研究しています。文学的とも呼べる見事な論述の本著は、今世紀有数の神話学者の代表作ともいえる1冊です。




